まるで生きるナビのような初めての恋人

ドライブというと、初めての彼氏とのデートを思い出す。サークルの先輩だったその人は、ちょっとおじんぽい、高級なセダンを乗り回していて、サークルで遅くなると家まで送ってくれる人。帰りに何人かの仲間を乗せて、次々家まで送り届けるのがいつものことだった。大学だから、仲間たちもあちこちから通っていた。その広い範囲を、住所だけで大体の場所まで連れて行ってくれる。当時もすごいなあ、と思っていた。

私は車の免許は持っていたけれど、住んでいる市内を走るのがせいぜい。それを思うと、まるで神様みたいに思えた。私は大学から一番離れたところに住んでいたので、いつも最後まで彼の隣に乗っていろいろな話をした。悩みを話したり、サークルのことを話したり。合宿も山梨県の河口湖まで、私を拾って連れて行ってくれた。

つき合うきっかけもドライブだった。夜景で有名な峠の展望台で、思えば彼は何だかいつもと違う様子だった。私は就活真っ最中。スーツを着て、コートを羽織ったままで彼に会った。まだ大学三年生だったけれど、舞台関係の仕事を探していて、とても小さな会社の面接に行った帰りだった。一緒にごはんを食べよう、と誘われ、いつもの調子で会ったけれど、帰り道に、夜景を見せるからとそこに連れて行かれたのだ。寒い時期だったので、帰ろう、と言うと、帰るの?と言われた。

だって、寒いじゃん。

今思うと、あの時の私はかなり鈍感だ。学校で会うならまだしも、わざわざ休み中にごはんの誘いを受けたというのに。

結局、彼はその時告白のタイミングを逃したらしい。後でメールが届いた。好きです、とストレートな文面で、生まれて初めてされた告白だった。

お金があまりないのもあったと思うけど、とにかくいつも車でドライブをした。一番すごいのは、午後二時ころに町田を発って、長瀞からの富士吉田、御殿場を経由して帰宅。ナビもないのに迷いもせず、地図を見ることもなくそんなドライブをしてしまう人はそれ以来出会っていない。半日もずっと隣に座っていたのに、話題が尽きなかった。帰宅すると母が鬼のような形相で待っていたけれど、あれもいい思い出だ。

ちなみに、後で知ったけれど、夜景がきれいなその場所は有名な心霊スポットでもあった。そこから少しだけ上に上がった峠は、夜中に誰も乗っていない車が走るとか、後ろからバイクの音が迫って来て、追い抜いていくのに姿が見えないとか、いろいろな怖い噂があるのだ。展望台まで至る道には街灯はひとつもなく、振り返ると本当に闇で、暗いってこういうことなのか、と思うような場所。ただ、展望台はいつもカップルでにぎわっているので、だれも怖いなんて思わないだろう。個人的には、あそこには夜行くのが一番だと思う。

結局その後彼とはあまり長続きせずに終わった。サークルでともにした時間よりもずっと短い時間だったけれど、一人の人と深く向き合った初めての経験で、今は大切な思い出だ。